失業して収入が減ってしまった…国民年金の保険料を免除してもらえたら毎月の生活費がすごく楽になるんだけれど…。
国民年金の保険料は老後に備えて支払っておくべきものですが、失業や病気などによって一時的に収入が少なくなってしまったときには免除してもらえるというルールがあります。
もちろん、その後に免除してもらった分を納めること(追納といいます)をしないと老後にもらえるお金は少なくなってしまいます。
しかし、毎月生活していくお金が足りない…という状況の人にとっては免除を受けることも選択肢に入れざるを得ない場合はあります。
ここでは国民年金保険料を免除してもらうための要件ついて解説させていただきます。
現在、毎月の保険料を生活費にあてられたら…とお悩みの方は参考にしてみてくださいね。
国民年金保険料を免除してもらうための要件
自営業やフリーターの方などは、国民年金の保険料を毎月自分で納める必要があります。
もしこの支払いを怠ってしまうと未納という扱いになってしまいます。
未納となっている国民年金保険料は、国民年金の受給資格の計算にはプラスされませんため、未納期間が長くなると最悪の場合は老後に国民年金がもらえなくなってしまう可能性もありますので注意が必要です。
保険料をどうしても支払うことができないときには、そのまま放置して未納の状態にするのではなく、免除や猶予の手続きを行なっておくことが適切です。
国民年金保険料免除・納付猶予制度
病気や失業など、何らかの事情によって保険料を支払うことがどうして難しい状況の方は、「国民年金保険料免除・納付猶予制度」を利用することを検討しましょう。
スポンサーリンク
国民年金保険料免除・納付猶予制度というのは、必要な手続きを済ませて国民年金保険料の免除扱いにしてもらうことができれば、年金の受給資格の計算には免除期間を含めてもらうことができるという制度のことです。
ただし、老後にもらえる年金額の計算を行う時にはきちんと保険料を納めている人と比べると反映される金額が2分の1となってしまいます。
免除してもらった期間中の保険料については後から追納することも可能ですので、老後に満額の国民年金を受け取りたい場合には追納の手続きを行うようにしましょう。
免除は所得の金額によって扱いが異なる
国民年金保険料の免除や猶予は、申請をした人の「所得」の金額が一定額以下の場合に認められます。
また、免除が認められる場合であっても、実際に免除される金額は申請する人の前年の所得の金額の大小によって異なります。
所得というのは自営業の人であれば「収入−必要経費」の金額です。
決算書を作っている人であれば利益の金額から青色申告特別控除の金額を差し引きした人が所得金額ということになりますので、確認してみてくださいね。
課税所得の金額による免除または猶予の扱いには以下の5種類があります。
①保険料の全額が免除される場合
申請をする人の所得額が以下の金額以下である場合は国民年金保険料の全額が免除されます。
(扶養している親族の人数+1)×35万円+22万円
例えば、奥さんと2人ぐらしの人であれば92万円、扶養している親族が3人いる人であれば162万円以内の所得額しかない場合には保険料の全額を免除してもらえる可能性があります。
②保険料の4分の3が免除される場合
スポンサーリンク
課税所得の金額が次の金額を下回るときは国民年金保険料の4分の3が免除となります。
78万円+社会保険料控除の金額+扶養親族等控除額
例えば、年間の保険料が16万円だったとすると、16万円×4分の3=12万円を免除してもらって4万円だけを支払えば良いということになります。
社会保険料控除の金額というのは1年間で支払った国民健康保険や国民年金保険料などの全額です(家族の分を支払った場合も含まれます)
扶養親族等控除額というのは16歳以上の親族であれば1人つき38万円、19歳〜23歳の親族であれば63万円、70歳以上の同居老親の場合であれば1人につき58万円です(同居していない場合は48万円)
③保険料の2分の1が免除される場合
前年の所得金額が次の金額の範囲内である場合は、本来支払うべき国民年金保険料の2分の1が免除されます。
118万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
扶養親族等や社会保険料控除の意味については②とまったく同じです。
④保険料の4分の1が免除される場合
申請をする人の課税所得額が以下の金額以下である場合は国民年金保険料の4分の1が免除されます。
158万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
こちらも扶養親族等、社会保険料控除の意味は②と同じです。
⑤保険料の納付を待ってもらえる場合(猶予)
上の①〜④では保険料を支払う必要がなくなる(免除)について解説させていただきましたが、これらの場合よりも所得額がやや多い場合には猶予(待ってもらえるだけ)の扱いになります。
国民年金保険料の支払いが猶予されるのは、前年の所得額が以下の金額の範囲内である場合です。
(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円
扶養親族等の意味については①で説明した内容と同じですので参考にしてみてくださいね。
アルバイト、パートの方の所得の計算方法
アルバイトやパートの人の場合、自営業の人とは違って単純に「収入−必要経費」という形では所得を計算することができません。
アルバイトやパートの人は「給与の金額−給与所得控除」によって所得額を計算します。
給与所得控除というのは法律で決まっている必要経費のようなもので、例えば以下のように決まっています。
スポンサーリンク
- 給与収入額180万円以下の人:収入額×40%(最低65万円)
- 給与収入額180〜360万円の人:収入額×30%+18万円
例えば、給与収入額が200万円の人であれば200万円×30%+18万円=78万円が給与所得控除になりますので、所得額は200万円−78万円=122万円ということになりますね。
なお、上の給与収入額というのは税金や社会保険料を天引きされる前の金額のことで、勤務先から年に一度受け取る源泉徴収票という書類の「支払金額」のことです。
免除申請が却下されて保険料を払えない場合
上の免除や猶予についての計算式はあくまでも目安ですので、所得額がその範囲内であったとしても免除申請が却下されてしまうことはあり得ます。
また、実際には所得額が上の計算式を上回っていたとしても免除の申請そのものはできますので、その場合にも免除の申請は却下されることは考えられます。
もし免除申請が却下されてしまった場合にも、できれば未納のまま放置しておくのは避けておきたいところです(未納のままにしていると、最悪の場合は強制執行などの形で納付を求められることがあります)
あなたの年間所得が130万円を下回っていて、あなたの配偶者や同一世帯の親族がサラリーマンとして働いているのであれば、その人の扶養に入ることも検討してみると良いかもしれません。
扶養に入るためにはその親族の人の勤務先に「扶養控除申告書」という書類を提出する必要がありますので、必要な手続きを勤務先の担当者の方に聞いてみましょう(普通は経理や人事総務が担当部署です)
国民年金の免除と継続審査について
国民年金の免除については1年ごと(年度は7月〜6月です)に審査を受ける必要がありますが、免除の申請書を出すときに「継続希望区分」で「1.する」を選択した場合には自動的に昨年度と同じ区分で免除申請をしたという扱いになり、継続審査を受けることができます。
もちろん、昨年1年分について免除が認められている人であっても、継続審査が行われるだけなので、そのまま免除が認められるかどうかはわかりません。
審査の結果として却下となってしまう可能性はありますし、これまで全額免除となっていたのが2分の1免除に変更といったように区分が変更される可能性はあります。
国民年金の免除要件の具体例
国民年金の免除を受けるための要件として、問題となることの多いケースについて具体的に見ていきましょう。
うつ病で国民年金保険料は免除になる?
うつ病を発症したことによって退職を余儀なくされたような場合、多くの場合収入が激減してしまいます。
しかし、うつ病となったことそのものは国民年金保険料の免除の要件に該当するというわけではありません(国民年金保険料が免除されるかどうかは、あくまでもその人の所得額によって判断されるのが原則です)
親御さんが健在の方の場合、家族と一緒に実家で暮らすという選択をする方もおられるかと思いますが、その場合には国民年金保険料の免除については家族の収入と合算で申請することになります。
あなた自身の所得要件なら免除の要件(前述)に該当する場合でも、生計を一緒にしている親族の方と合算すると免除の要件を満たさない状態になってしまうことはあり得ます。
その場合には親族の方がサラリーマンであれば親族の方の扶養に入ることも選択肢に入れてみることが考えられます。
国民年金は海外移住すると免除される?
国民年金は日本国内に住んでいる日本国籍を持つ人は強制加入となりますが、海外在住で日本国籍を持っているという方は「任意加入」という扱いになります。
簡単にいうと「保険料を支払っても支払わなくても良い状態」になるわけなので、保険料の支払いをする必要は無くなります。
ただし、保険料を支払っていないのであれば当然老後に受け取る年金も無くなります。
その場合には年金を受給するための要件(10年以上の納付期間があることです)を満たせば老後には日本の国民年金から年金を受給することが可能になりますので、日本の年金を老後に受け取りたいと考えている人は海外移住後には任意加入の制度を利用しましょう。
海外に移住した人が日本の国民年金に加入し続けるためには任意加入の手続き(これから海外移住する人は市町村役場で行います)が必要です。
国民年金免除の失業特例
失業したことが直接的な原因で収入が減少し、国民年金保険料の免除を希望するに至った場合には、上で説明させていただいた「国民年金保険料免除・納付猶予制度」の手続きを行う際に雇用保険受給資格者証の写しまたは雇用保険被保険者離職票等の写しのどちらかを提出しましょう
自営業の人が廃業をしたことによって失業に至った場合には、税務署に提出している廃業届や登記簿謄本が必要になります(登記簿謄本は法務局で取得します)
国民年金保険料免除のメリットとデメリット
国民年金の免除申請が認められるとによるメリットとデメリットについて理解しておきましょう。
国民年金の免除を受けるメリット
国民年金の保険料がどうしても払えないときにはそのまま放置して未払いとするケースと、免除の申請をすることの2つが考えられます。
単純に未払いとした場合と免除申請を行った場合を比較すると、以下のようなメリットがあります。
①免除期間も受給資格期間に含めてもらえる
老後に国民年金を受け取るためには、10年以上は国民年金の保険料を納め続けなくてはなりません(従来は25年でしたが、平成29年8月以降は10年に短縮されます)
これを国民年金の受給資格期間と言いますが、単純に未納状態になっていると、その期間中はこの受給資格期間も0ヶ月間ということになってしまいます。
国民年金保険料の免除を認めてもらうと、免除期間中もこの受給資格期間に含めることができるというメリットがあります。
簡単にいうと、国民年金保険料を支払っていなかったとしても老後に受け取るための資格期間をプラスしてもらうことができるということですね。
例えば、10年間にわたって免除を受けたとしたら、1円も保険料を払っていなかったとしても年金受給のための資格を得ることができることになります(ただし、次に述べるように受給額は満額ではありません)
②保険料の一部を国に負担してもらえる
保険料の免除を受けている場合には一定の割合が国による負担で納付した扱いにしてもらうことができます。
例えば、全額の免除を受けているときには本来のうち保険料のうち2分の1は支払ったものとして将来受け取る保険金額の計算に含めてもらうことができます。
国に負担してもらうことができる割合はいくらの免除を受けているかによって異なります。
例えば、2分の1の免除を受けている場合には8分の6、4分の1免除を受けている場合は8分の5、4分の3免除の場合は8分の7となります。
※上記の割合については平成21年以降扱いが変わっているので注意して下さい。
国民年金の免除を受けるデメリット
国民年金保険料の免除を受けるデメリットは、将来もらえる年金が少なくなる可能性があることです。
上でも説明させていただいた通り、免除の手続きを行なって入れば保険料の一部を国に負担してもらうことができますが、それでも保険料の全額をきっちりと支払っている人と比較するともらえる金額が少なくなってしまいます。
老後にもらえる国民年金の満額は年78万円なのでこれだけでは十分とは言えませんが、保険料をきちんと払っていないとここからさらに減額という形になってしまいますので注意しましょう。
実際に免除を受けたけれど、老後にもらえる金額が減ってしまうのが嫌…という場合には後から追納の手続きを取ることも可能です。
追納は本来支払う時期から起算して10年以内であればさかのぼって行うことが可能ですので、検討してみると良いでしょう。
国民年金保険料の免除を受けるための手続き
所得の金額が一定額以下の場合に国民年金保険料は免除されますが、実際に免除を受けるためには市役所での手続きを行わなくてはなりません。
免除されるかどうか、また免除がどのぐらい認められるかはあなたの前年の所得によって決まりますが、所得の金額等は市役所側でデータを確認できますので特に資料は持っていく必要はありません(念のために住基カードやマイナンバー等がある場合は持っていくと良いです)
前年の所得について確定申告等を行なっておらず、前年の所得についてデータがない場合にはその場で確定申告手続きを行うことも可能です。
国民年金保険料の免除を受けたい人の場合、収入が少ないかない場合が多いでしょうから、その場でおおよその金額を職員に伝えることで確定申告完了としてもらえるケースが多いです。
満額もらうために追納する時の手続き
国民年金保険料の免除を受けると、免除されている期間は老後に年金を受け取るための受給資格の年数に含めることができますが、一部の納付とされるためにそのままにしていると満額受け取ることができません。
老後に年金を満額受け取りたいという場合には後から保険料を追納(後払い)しましょう。
免除してもらった保険料を追納するためには年金事務所で納付書をもらってくる必要があります(追納できるのは10年前までの保険料に限られます)
なお、追納した国民年金保険料については、所得税や住民税の計算で追納をした年の社会保険料控除に含めることができます。
追納した過去の保険料については勤務先等で年末調整の計算に含めてもらうことは通常難しいので、確定申告が必要になります。
勤務先から受け取る源泉徴収票と追納した国民年金保険料の領収書等は保管しておいて、支払った年の翌年2月16日〜3月15日の期間中に税務署で確定申告の手続きを行うようにしてくださいね。
まとめ
今回は、生活が苦しい時に国民年金を免除してもらうための方法について解説させていただきました。
国民年金保険料を免除してもらうと、免除してもらった期間は毎月の保険料を支払う義務が無くなりますが、その分老後にもらえる年金の金額は少なくなってしまいます。
収入が減ってしまった時には目先の出費が減ることはとても助かるものですが、長い目で見ると老後の不安につながってしまうことも検討しておくべきです。
免除を受けるのはあくまでも緊急的な対策と考え、少しでも早く保険料支払いを再開できるよう努力することがたいせつです。
免除をしてもらった期間中の保険料は追納を行うことができます。
必要な期間について追納をきちんと行えば老後に満額を受け取ることができるようになりますので、これまで国民年金保険料を支払っていなかった期間がある方は本文で解説させていただいた追納についても参考にしてみてくださいね。